アハラノフ・ボーム効果

 電子が磁場や電場がなくてもベクトルポテンシャルがあればその影響を受けることをいいます.1959年にY. AharonovとD. Bohmにより予言され、いまでは完全に実験によって確かめられています.

十分に長いソレノイドでは、ソレノイドの外にはベクトルポテンシャルのみが存在します.ソレノイドを囲むような2つの経路を用いて電子線の干渉縞を作ると、干渉縞はソレノイド内部の磁束に対して周期的に変動します.その周期h/eは磁束量子と呼ばれます.

 では、物質中に並べられた電子のスピンの間の相互作用に対して、アハラノフ・ボーム効果はどのような現象を引き起こすでしょうか?半導体界面2次元電子系の場合、電子の運動経路にも磁場がかかっていますが、ウィグナー固体中のリング状交換で重要なのは交換経路を貫く磁束の大きさです.

このアハラノフ・ボーム効果による位相の変化は、そのまま交換相互作用の性質を変えることになります.例えば、磁束のない時には強磁性を示す3体交換相互作用は、交換経路を貫く磁束が磁束量子h/eのちょうど半分になったときには反強磁性的になります.また、途中の磁束においては、実効的な交換相互作用定数が「虚数になる!!」ような状態を作り出すこともできます.