交換相互作用

 粒子同士の位置交換によってスピン間に生じる実効的な力.1/2のスピンを持つ電子やヘリウム3原子はフェルミ統計に従います.フェルミ統計では、2つの粒子の入れ替えに対して波動関数の符合が変わりますが、ここでいう波動関数とは電子の位置座標を表す波動関数とスピンを表す波動関数の積で表されます.従って、例えば、位置座標を表す波動関数が2つの粒子の入れ替えに対して符合を変えるときは、スピンを表す波動関数は符合を変えてはなりません.また、位置座標を表す波動関数が2つの粒子の入れ替えに対して符合を変えないときは、スピンを表す波動関数は符合を変えねばなりません.

 トンネリングによる粒子交換が起こるときには、位置座標を表す波動関数が交換に対して符合を変えるか否かでエネルギーに差が生じます.対称的な(交換に対して符合を変えない)位置座標波動関数の方が、節を持つ反対称的な波動関数よりもエネルギーが低くなり、そのエネルギー差はトンネリング確率に比例します.2個の粒子の交換の場合、対称的な位置座標波動関数は、反対称的なスピン波動関数と結びつきますから、2個の粒子の交換は反強磁性的であるといえます.

 ウィグナー固体や固体ヘリウム3(3次元、2次元)などでは、窮屈な2個の粒子の交換よりも、むしろ、周りの粒子に邪魔されずにスムーズに交換することができる3個の粒子の交換などが重要であると考えられています.

 3つ以上の粒子のリング状交換は、2個の粒子の交換の積で書くことができます.偶数個の粒子の交換は奇数回の2粒子交換の積として、奇数個の粒子の交換は偶数回の2粒子交換の積として.全波動関数の符号は、偶数個の粒子の交換では符合を変え、奇数個の粒子の交換では符合を変えないことになります.従って、対称的な位置座標波動関数は、偶数個の粒子の交換では反対称的なスピン波動関数と、奇数個の粒子の交換では対称的なスピン波動関数と結びつきます.偶数個の粒子の交換は反強磁性的、奇数個の粒子の交換は強磁性的なスピン間相互作用を作ります.

 こうした交換の性質は、以前から良く知られていたのですが、私たちはこの交換の性質をアハラノフボーム効果を使って劇的に変えてやろうと考えています.